若い先生から、質問されたことがあります。
「なぜ、高橋先生のクラスは、先生は黙って見ているだけなのに、子供達は分数の話しかしないんですか?私の授業だと、子供達は関係ない話ばっかりするんです。」
それに対して、わたしは上手く答えることができませんでした。
「だって、算数の時間だからねえ。分数の単元だから、分数の話をするでしょう?あ、でも、あの子達はこの単元が終わってるから、違う話をしてるけど?」
みたいな(笑)。こうして文字にするとかなり間抜けですね。何も答えていません、これじゃ。
でも、ちゃんと答えようと思っても難しいのです。もう少しちゃんと答えようとすると、こんな感じでしょうか。
「それはね、わたしが『勉強しようぜー!』ってオーラを発していて、それを吸い取った子供達が一生懸命勉強していて、それが楽しいからその子たちが『勉強楽しー!』ってオーラを発してくれるから、他の子もそのオーラを吸い取って、『まあ、楽しいかな』って感じになっているんだよ。」
分かる人には分かるかもしれませんが、分からない人には分からないですね。
この「オーラ」というのは、雰囲気とか空気とかとはちょっと違うのです。
「雰囲気」や「空気」だと、実態がないように感じます。
「オーラ」は確実に存在するのです。よく言われるのが、ちょっとした視線や表情、思わず発する言葉なんかでしょうね。「腹」とか「肝」とか言われるものでもあります。
子供達は、それを確実に感じ取っています。「2割」どころじゃないと思うんですよね。
ちょっと前に、授業の様子を山ほど撮影した時期があります。自分の見取り能力を上げるために。
その映像を見ていて発見したことです。
ある日の算数。わたしは一人の子が苦戦しているを感じていました。
「ああ、A君は分かっていないな。」
早く誰か教えてあげないかな、A君も早く聞きに行けばいいのに。そう思って遠くから眺めていました。でも、あんまり見つめすぎないようにしながら。
でも、ふとA君を見た時、A君が「あ!」という顔をしました。そして、すらすらと問題を解き始めたのです。どうやら閃いたようです。わたしは思わず
「おー!A君!」
と大きな声を上げてしまいました。すると、他の子たちが一斉に顔を上げてわたしを見たのです。
ビデオで確認すると、学級の半分以上がわたしの顔を見ていました。そして、
「先生は、何を言うのかな?」
という顔で、わたしをじっと見つめていました。
わたしの一言に極めて敏感に反応してくれているんだなあと感じました。
教師の存在感って大きいんですよね。そこにもっと自覚的にならないといけないな、そう感じました。
その大きな存在感を使って、教師がまず最初にやるべきことは、「夢のある話を語ること」だと思うのです。
つづく。