『学び合い』 流動型『学び合い』 学びのカリキュラム・マネジメント アクティブ・ラーニング

nao_takaの『縦横無尽』

小学校教員なおたかのブログです。『学び合い』(二重かっこ学び合い)を実践しています。単著「流動型『学び合い』の授業作り」を上梓しました。お手に取っていただければ幸いです。

追い込まれた学校と、そこからの前向きな逃走

「学校評価アンケート」によって、多くの教員が「好かれなくてはならない」「気に入られなければならない」という思い込みに苦しんでいる。私は気にし過ぎる性格なので、アンケート結果は意図的に、なるべく気にしないようにして、基本的には楽しく仕事をしている。でも時々、「学校は本当に苦しくなったなあ。いつからこんなに苦しくなったんだろう」と感じる。

 

子供達も苦しそう。もしも、小学校生活に完全にフィットしようと思ったら、週に30時間の国社算理生外音図家体総合がどれも楽しく学べて、道徳性も高く、学力テストの結果も良好で、家に帰ってからも宿題を進んでやり、読書も好きで、運動も精一杯やれて、体力も十分で、人前で歌ったり踊ったりすることも喜んでやり、コンピューターを使いこなし、絵も丁寧に描き、将来の目標も明確で、思いやりの心を持って助け合い、体重も平均的で、虫歯もなく、好き嫌いなく何でも食べ、プログラミング的思考を持ち…と「そんな子いるの!?」という完璧さが求められる。

本当はそんなこと誰も求めていない“つもり”だ。しかし、結果として、そんな子供を目指して指導がなされている。そんな完璧な子はいないから、皆んなが苦しむことになる。なぜ、こんなことになるのだろうか。

 

毎月行われるアンケートで「学校があまり楽しくない」と答える子が一人でもいたら、担任は即時対応を求められ、更には、学力や体力、健康面だけでなく、自己肯定感や将来の夢に至るまで、多種多様な調査の結果が「平均以下」だと「具体的な改善策」を求められる。そんなの無理だ。

なんて言うと

「学校が楽しくない子がいるのに、放っておくのか!」

「いじめを見逃すのか!」

「そんなに高い結果を求めているわけじゃない。だが、全国平均に達していないのは問題だ!」

とお叱りを受ける。

ごもっともです。放っておいてはいけません。平均以下は許されません。何があっても、どんなに時間をかけても対応すべきです。

一方で、時間外労働の削減と、年休の取得日数という新たなノルマも課せられた。私達の働き方を良くするために。本当に有難い限りだ。

今の学校は「ぼちぼち」じゃ駄目なのだ。誰が言い出したのか分からないが、学校で行うアンケートは4段階評価ばかりになり「真ん中」が消えた。

「学校生活は楽しい?」

「うーん、普通かな」

は許されない。事実上、楽しいか楽しくないかの二者択一。その結果、学校のありとあらゆるものを嫌がらず、“主体的に”“楽しく”取り組める子供の姿を、多くの教員が無意識のうちに求めて指導している。そして、子供達もそういう子を演じようとする。

こんなにギチギチに詰め込まれた学校で、楽しくないことがないわけがない。できないことがあって当たり前。楽しくないことを許容できるから楽しくなる。できないことを許容するからできるようになる。それが理解できない人のなんと多いことか。

 

子供達も教員も、こんな学校からどんどんと逃げていく。子供達の逃走としては、不登校や校内暴力の増加というデータが分かりやすい。N高に代表される広域通信制高校の広がりも象徴的だ。

教員の逃走として象徴的なのは、普通の公立学校で教員が定数を満たさない状況だろう。教員採用試験の倍率低下もニュースで取り上げられた。あまりニュースにならない話としては、再任用の問題もある。担任不足や管理職不足、そして若い教員が増えることへの対応として再任用の方を充てるケースが増えているようだ。でも、再任用は給与がグッと下がる。退職後にその給与で担任をするのは嫌だ、という話を聞いたことがある。私だって嫌だ。今後、退職が65歳になるという噂も聞くが、その場合、65歳まで働く教諭がどれくらいの割合でいるのだろうか。そのうち、この問題が表面化するだろうな。

 

もちろん、こういう状況をただ指を咥えて見ているわけではない。私も、私の周囲の教員の方々も、可能な限り抗っている。私は、自分の授業を「縦」方向から「横」方向にシフトした。つまり、自分の実践をどんどん変化させて新しいことを求めて縦に突き進む授業をやめて、同僚と横の連携を図りながら協働的に進んでいくようにしている。今の勤務校では、学年2クラスとも『学び合い』で授業している。他学年でも段々と『学び合い』に取り組んでくれている同僚が増えている。以前勤めた学校では、校長先生から

「退職後は再任用を希望するから、今のうちに『学び合い』のことを勉強させて欲しい」

と頼まれたこともある。あのK校長先生はお元気だろうか。

それはつまり、ほとんどの教員は「今のままでは駄目だ」と理解しているということだ。でも、同時に「じゃあ、新しいものって、具体的に何があるのさ」とも思っている。そこに、高橋という「変な人」が来たから、乗ってくれた。あくまで、同僚が自主的に取り組んでくれているのだけれど、私のような凡人の一教諭が、他のクラスに影響を与えることに、大きなプレッシャーを感じる。私自身も、私の授業も完璧なわけじゃないのだから、胃が痛くなる。最近は、3年、2年と短いスパンで転勤してしまったので、自分自身のことだけでもてんてこ舞いなのに。こんなに背負えないよ!!と思う時もある。また、結果が出るにはそれなりに時間がかかる。でも、今の学校では、誰も待ってくれない。行政も、保護者も、児童も、教員自身も待てない。即時解決を求める。そんなの無理なのに。その中で、エネルギーが切れそうにもなる時もある。

 

やっぱり、逃げるが勝ち、かもね。

 

でもね。私は、どうせ逃げるなら、前のめりにいきたい。私はとことん突き詰めてしまうタイプ。逃げ始めたら、どこまでも逃げ続けてしまいかねない。だから、前に進むしかないのだ。あ、でも、皆さんは普通に逃げても良いと思いますよ。何だかんだ言って、私は楽しんでいるだけですから。

 

完璧じゃなきゃ楽しめない、なんていうのは勘違い。

「これ、苦手なんだよー」

「これ、できないんだよなあ」

と認め、その上で、

「これは、俺には向いてないから、助けて!」

「こっちはできるまでトコトンやりたい!」

「それなら私が助けてあげられるよー」

と自らの課題を定めて、助け合う。子供達も、教員も、ね。そういう学びの場を作っていきたい。