『学び合い』 流動型『学び合い』 学びのカリキュラム・マネジメント アクティブ・ラーニング

nao_takaの『縦横無尽』

小学校教員なおたかのブログです。『学び合い』(二重かっこ学び合い)を実践しています。単著「流動型『学び合い』の授業作り」を上梓しました。お手に取っていただければ幸いです。

籠の鳥だって,空を飛べる

「脱・足し算」への第一歩として,
1.失敗観を変えること
 「失敗しないこと」を求めない。「失敗は必要なもの」と捉え,失敗を乗り越えることを求める。
2.「方法」を語らず,「目的」を語ること
 「学習方法」ばかりを語っていると,必ず学習はぶれてくる。
3.最優先するものを決めること
 自分の授業の軸を定めるために,その核となるものを一つに絞る。
の三つのことを説明しました。


ここまで書いて,「あ!」と思いました。わたしが,最も大切だと考えている大前提が抜けていました。
この話に賛同してくれる人はどれくらい居るのでしょうか。ちょっと不安を感じながら書きます。


『学び合い』に限らず,「協同的」な学習では,児童の「コミュニケーション能力」を重視している場合が多いと思います。中には,「コミュニケーション能力を育てるために,学び合うことが大切」とおっしゃる方もいます。


が,わたしは,そうは思っていません。「コミュニケーション能力」を育てるためには授業を行っていません。というか,「コミュニケーション能力」って何なのかよく分からないし,かなりアヤシイ言葉だと思っています。
というのは,人間はもともと「コミュニケーション能力」とやらを有していると思うからです。人の気持ちを理解する能力なんて,赤ん坊だって持っていますから。
でも,教室や職員室や世の中を見ていると,コミュニケーションを取れていない人を見ることは山ほどあります。それって,どういうことなのでしょうか。わたしが思うに,その原因は「関係性」にあります。
教室で子ども達を見ているとよく分かりますよね。友達に「教えて」と言えない「あの子」はコミュニケーション能力がないわけじゃないんです。色々あって心を閉ざしてしまっているだけです。


年末にも書きましたが,わたしは「“学び合う”のがホモ・サピエンスの基本戦略」だと思っています。取り立てて練習する必要なんてないから,多くの子は学び合うのです。そして,なかなか学び合えない子も,本気で伸びたい!と思った時には,学び合うことを選ぶのです。知りたいことを人に聞く。その程度の「コミュニケーション能力」は極わずかな例外を除いて,誰もが保有しているのです。それが出来ないのは,「能力」の問題ではありません。関係性の問題です。
わたしが「一人も見捨てない」と言う時に考えるのは,「クラスの中の誰にも,分からないことを聞くことができないような,一人ぼっちの学校生活を送っている子」のことです。
「一人で居るのが好きな子も居るだろう」という方もいるでしょう。居るかもしれません。でも,わたしが言いたいのは,そういうことではありません。「分からないことを人に聞くことができるか,できないか」です。
それができないのは,その子の「コミュニケーション能力」に問題があるからではありません。その子と周囲の「関係性」が問題なのです。


籠に閉じ込められている鳥は,もちろん,空を飛べません。飛ぶことを忘れたように見えます。でも,籠から出してやれば,大きく羽ばたき,飛んでいきます。飛べないのは,「邪魔」があるからです。(西川先生の受け売りですが)

子ども達の「コミュニケーション能力」も同じです。校庭で伸び伸びと遊んでいる時には「聞ける」し「話せる」のです。それができないのは「邪魔」があるからです。
その邪魔をなくしてあげれば,子ども達は聞けるし,話せます。籠から出された鳥の様に。ヒマラヤを飛び越えるアネハヅルのようにはいかないかもしれません。能力には個人差があります。でも,算数や国語を理解する程度には聞けるし,話せるのです。(これと,織り重ねる学びで求める「書く」能力は,全く別の物です。国語科で学習するような「プレゼン」の能力も別です。その区別がつかない人も,『学び合い』に失敗しそうな気がします)


ですから,教師は「コミュニケーション能力」とやらを鍛えようとするよりも,子ども達の関係性を改善すべきです。そして,人間関係を良くするにはどうすれば良いのでしょう。それは,「お楽しみ会」をやるんではないのです。より高度な課題を共に達成した時,関係性は良くなるのです。だから,子ども達に「もっと!もっと!」と求めるのです。


この仕組みが分かれば,『学び合い』にあれこれ足す必要なんてなくなります。

繰り返します。「コミュニケーション能力」を伸ばす学習なんて『学び合い』には必要ありません。みんな持っています。籠の鳥のようにね!
それがわたしの考えです。