正月にこの本を読みました。
こころをよむ 心の進化をさぐる―はじめての霊長類学 (NHKシリーズ)
- 作者: 松沢哲郎
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2017/09/26
- メディア: ムック
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ネットで検索していて、ビビッときた本でした。これは面白そう!と直感的に感じた期待通りの面白さ。
ここでの「面白さ」というのは、私が考えてきたこととリンクしているということ。私があれこれ思考してきた「人間の本能と『学び合い』の関係」が、この本のおかげでピシッと筋が通りました。
例えば、こんなこと。
社会的知性の第四段階は、相手の心を理解する心の出現です。「他者理解」とか「心の理論」と呼ばれます。他者の心が、自分の心とは違うということを理解します。(中略)他者の行動を見たとき、自分がその行動をしたときの結果を自らもすでに経験しているので、他者に生じているはずの心を理解することができる。(P111より)
これはまさに、今年の私の教室で、子供達に育もうとしていることです。そして、筆者はこの社会的知性を
仲間とかかわるなかで発揮される知性です。(P112)
と述べています。
うん、うん、そうなんだよね。教室の子供達を見ていると、相手の心を慮ることが苦手な子は、「生活経験」が乏しい場合が多いようです(もちろん、発達的な問題もあるでしょうけれど)。自分が経験していないことは、相手の心を想像しにくい。相手の心が分からないから、その子の立場に立てない。だから、うまく関われない。そんな姿を目にします。ということは、私がしてあげるべきなのは、「相手の気持ち」を言って聞かせることでなく、教室内で可能な限りの「経験値」を積ませてあげることなんだろうな。
また、
チンパンジーでも互恵性の成立が難しいことがわかりました。逆に言えば、互恵性こそが人間の特徴だと言えるでしょう。(P124)
とも述べています。互恵性、つまりは、「相手のためになることは、自分にとって得だと理解できること」と私は理解しました。人間は本能的に、互恵が自分に得だと理解しているのではないでしょうか。私はこの本能を生かして授業をしているんだよね。
さらには、こんなことも。
「今、ここ、わたし」という世界に生きているのがチンパンジー(中略)それに対して人間は、今だけでなく、過去や未来に生きています。ここだけではなく、隣や山の向こうや地球の裏側にまで思いをはせます。(P181)
これも私が子供達に語っている「大人の条件」の話とほぼ一緒です。私は「チンパンジー」ではなく「赤ちゃん」と言っていますが。
人格とは何か。何が人間を人間たらしめているのか。今までも、私なりに考えてきましたが、この本によって、裏付けをもらえたように思います。また、新たな視点として、「学習の臨界期(P130)」というものも得ました。これについては、ゆっくりと考えていかなくちゃ。
これで3学期からは、確信を持って語れることが増えました。