経験が役に立つこともあるけれど、でも、経験が邪魔になることもある。
「過去に似たようなことがあったから」
「いつもこうやってきたから」
そんなことを言っていると、目の前の子供の姿が見えなくなる。経験によって眼が曇る。そんな失敗を何度もしている。
かと言って、経験を全て捨ててしまうのも難しい。経験を生かさないと、先を予想できない。思い付きやその場しのぎの仕事になってしまう。暗中模索は怖い。その恐怖心によって眼が曇る。子供たちの姿が見えなくなる。若い頃はそうだったし、今だって、ゼロじゃない。
結局は、私には見えないのだ。それを認めるしかない。
「俺は全てを分かっているよ」
なんて大嘘をついたら、ますます眼が曇ることになるだろう。
微かな光を頼りにして、にじるように前に進む。今までも、これからも。